寒河江小学校いじめ防止基本方針  (令和6年2月1日改正) 

 

Ⅰ いじめ問題に関する基本的な考え方

1 いじめの定義

 「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。(「いじめ防止対策推進法」第2条)

<いじめの態様の例> 
① 冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる。
② 仲間はずれ、集団による無視をされる。
③ 軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする。
④ ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする。
⑤ 金品をたかられる。
⑥ 金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする。
⑦ 嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする。
⑧ パソコンや携帯電話等で誹謗中傷や嫌なことをされる。
(文部科学省「いじめ防止等のための基本的な方針」より)
                                                                                            

2 いじめに対する基本的認識

 いじめは、いじめを受けた児童の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがある絶対に許されない行為である。
 また、いじめは、どの子どもにも、どのような場面においても起こりうる問題である。こうした認識を、教職員はもとより保護者や地域住民が共通認識として持ち、地域社会全体でいじめの根絶にあたらなければならない。

3 いじめ防止等に関する基本体制

(1) 国、県及び市の動向

① いじめが社会的に重大な問題であることから、国は、平成25年6月に「いじめ防止対策推進法(以下「法」という。)」を制定し、同年9月に同法が施行された。また、10月には同法第11条に基づき、「いじめ防止基本方針(以下「国基本方針」という。)」が策定された。
② 山形県はこれを受け、平成26年4月に「山形県いじめ防止基本方針(以下「県基本方針」という。)」を策定した。
③ 寒河江市でもこれらを受け、平成26年7月に「寒河江市いじめ防止基本方針(以下「市基本方針」という。)」を策定。最近では令和4年3月24日に改訂した。
④ 平成28年6月、国は「いじめ防止対策協議会」を設置し、いじめ防止対策推進法に基づく取組状況の把握と検証を行うとともに、いじめの問題等に関して、関係者間の連携強化を図ったより実効的な対策について協議した。その後、平成29年2月に国基本方針の改定案が示された。

(2) 本校における基本体制

① 法第13条に基づき、また国、県及び市基本方針を踏まえ、学校におけるいじめ防止等に関する基本的な方針を定めるために、「寒河江市立寒河江小学校いじめ防止基本方針(以下「本校基本方針」という。)」を策定する。
② 法第22条に基づき、学校に、いじめの防止等に関する措置を実効的に行うための常設の組織として「いじめ防止対策委員会」を置く。この組織は、校長・教頭・教務主任・生徒指導主任・養護教諭・教育相談担当・学年主任等の教職員を基本構成員とし、必要に応じて該当の担任や市教育委員会、市福祉部局の担当者、また、保護者の代表や学校運営協議会委員、SCなど心理・福祉の専門家等を加え、実効的な組織となるように努める。なお、いじめ防止対策委員会の運営については、別に定めるとともに、組織のあり方や専門家を加える場合の人材の確保等については、市教育委員会からの指導・助言を得るものとする。

 

Ⅱ いじめ問題に対応する基本的施策

1 未然防止の取組

(1) 児童理解に基づくきめ細かな教育の推進

① 個々の児童理解に基づいた適切な指導・支援を、教育活動全体を通じて組織的 に行い、児童一人一人が安全に安心して過ごせる学校づくりを推進することを学校経営の基盤とする。特に、発達障がい、性同一性障害、性的指向・性自認等に係る児童、東日本大震災により被災した児童、その他学校として特に配慮が必要な児童について、当該児童の特性を踏まえた適切な支援体制を構築する。 

(2) いじめ問題に関する教職員の研修の充実

① いじめ問題に対して、教職員が児童の情報を共有すると共に、共通の認識に立って組織的な対応をしていくことが大切である。また、国や県・市の施策についても十分な理解のもとに、対策を推進していく必要がある。そのため、いじめ問題に関する教職員の研修を充実させ、未然防止に向けた体制を整えていく。

(3) 「いのちの教育」の推進

① 教育活動全体を通じて、生命の尊さや人間としての生き方を大切にする「いのちの教育」を推進する。また、道徳の時間においては、自他の尊重や思いやりの気持ちを育み、望ましい人間関係を実現しようとする道徳的実践力を高める。 

(4) 情報教育におけるモラル指導の徹底

① ICT教育の推進と併せて、インターネット上のいじめやトラブルに巻き込まれることを防止する観点から、有害情報への対応などの情報モラル教育を行う。また、児童のインターネット利用状況等について定期的に実態を把握するとともに、家庭等への情報提供を行い、連携して「ネット上のいじめ」の未然防止に向けた情報共有への協力を求める。 

(5) 児童の主体的な活動の促進

① いじめが、大人の見えにくい子どもの世界で起きていることを踏まえ、児童のいじめに対する理解を進める。具体的には、学級集団や児童会の活動等を通じて、いじめの防止等に関わる児童の自主的な企画及び運営による活動を促進し、児童自身が、集団の課題を主体的に解決できる力を高め、望ましい集団づくりができるような指導を行う。 

(6) 感染症等に関する人権への配慮と対応

① 感染症等の感染者や濃厚接触者、感染症の対応や治療にあたる医療従事者等に関係する児童に対して、偏見やいじめが起こらないよう、学校全体で注意深く見守り、いじめの未然防止に取り組むと共に、不安やストレスを抱え込んでいる児童がいる場合には、SC等を活用し、必要に応じて関係機関と連携を取りながら対応する。また、心ない言動やSNSへの書き込みなど差別や偏見、いじめを決して行わないよう、感染症に係る適切な知識を基に発達段階に応じた指導を徹底する。 

(7) PTAや家庭における取組

① 保護者は子の教育について第一義的な責任を有するものであることから、家庭の中で児童の規範意識を育て、いじめは決して許されないことであることを十分に指導する必要がある。PTA組織を通して、教育の原点である家庭教育についての保護者の意識啓発を図り、研修機会等を充実させていく。また、保護者同士のネットワークを活用して、いじめに関する情報の収集に努め、得られた情報は速やかに学校に知らせるなど、保護者と学校が情報を共有しながら、いじめの防止に努める。  

(8) インターネット上のいじめへの対応

 学校では、ICT教育の推進と併せて、インターネット上のいじめやトラブルに巻き込まれることを防止する観点から、情報モラル教育を行っていく。特に、ウェブサイト上における特定の児童への誹謗中傷、画像や動画の掲載などがいじめにつながり、容易に被害者にも加害者にもなることを各学年の発達段階に応じて適切に指導する。また、児童生徒のインターネット利用状況等について十分に実態を把握するとともに、家庭等への情報提供を行い、連携して「ネット上のいじめ」の未然防止に向けた情報共有への協力を求めていく。
 SNS等による誹謗中傷やインターネット上の不適切な書き込み等があった場合には、被害の拡大を避けるための指導を速やかに行う。特に、名誉棄損やプライバシー侵害等については、管理者やプロバイダに対して速やかに削除を求めなど必要な措置を講じる。
 一人一台タブレットPC端末の日常的な活用を進めつつ、日々の活用の中で有害情報への対応や相手への影響を意識した情報モラルを育成するための手立てを講じる。情報モラルの取得状況について、客観的な把握を行い、児童への指導に生かす。各家庭においては、子どものインターネット等の利用状況を把握し、発達段階に応じた適切なルールづくりやフィルタリング等による制限を行うことで、児童が「ネット上のいじめ」において被害者にも加害者にもならないよう努める。また、PTAにおいては、研修会のテーマに特に「ネット上のいじめ」に関することを取り上げたり、学級や学年懇談会において話題にしたりする等、「ネット上のいじめ」の未然防止に向けた活動を推進する。

2 早期発見の取組

(1) 児童理解の努力と組織的な対応

① 児童との日常的な観察や会話を大切にするとともに、県基本方針にある「教職員用チェックリスト」等の活用により、学級集団等の状況を常に把握・点検し、児童の小さな変化をとらえることができるようにする。
② 児童がいじめや心の不安を訴えやすい学級経営や信頼関係の構築に努める。また、担任等以外にも、校内で児童が気軽に相談できる場を設置するとともに、市の教育相談ダイヤルや県の相談ダイヤル等についても児童生徒に周知する。
③ 県基本方針に基づく年2回の「いじめ早期発見アンケート」を中心に、定期的なアンケート調査を実施するとともに、個人面談等の手法を用いて、日常的な観察以外の手段についても方策の充実を図る。 
④ 気になる事案があった際には、すぐに情報を教頭や教育相談委員会に報告するとともに、全教職員が情報を共有する「子どもを語る会」の機会を大切にし、組織的な対応を行う。

(2) 学校・家庭等の情報ネットワークづくり

① 保護者及び地域住民にいじめ防止に関する情報を発信するとともに、児童の気になる状況等があれば、気軽に情報提供をいただける信頼関係の構築に努める。
② 県基本方針にある「家庭用チェックリスト」の活用や、「いじめに関する保護者アンケート」等の実施により、家庭と連携して児童を見守り、いじめの早期発見につなげることができる体制整備を行う。なお、実施したアンケート等については、児童生徒の卒業後、5年間保存するものとする。
③ 市教育委員会やPTA、関係機関と連携したネットパトロールの実施により、インターネット等による問題の早期発見と被害拡大防止を図る。

3 いじめ発生時の対応

(1) いじめが疑われる事案が発生した場合の基本的な流れ

① 教職員が、いじめが疑われる事案を発見した場合、若しくは児童や保護者からの訴え又はいじめに関わる外部からの情報提供があった場合は、ただちに教頭に報告し、学校として組織的な対応を行う。
②「いじめ防止対策委員会」を適切に活用して情報を共有するとともに、校長のリーダーシップのもと、関係児童からの聴き取り等による正確な事実確認を行う。
③ 校長は事実確認の結果について、責任を持って市教育委員会に報告する。また、事実確認の途中であっても、重大事態となる疑いがある場合には、ただちに市教育委員会への報告を行う。

(2) いじめと認知した場合の対応

① 組織的な対応
 校長は、いじめと認知した事案について、以下の事項について指示し、組織的に解決にあたる。
  ・指導方針及び指導体制
  ・関係する児童に対する具体的な指導や支援等の方法
  ・保護者等との連携(必要に応じて外部機関との連携)の在り方
  ・今後の対策
② いじめを受けた児童及びその保護者への対応
 いじめを受けた児童に対しては、当該児童が信頼できる教職員や友人と連携し、当該児童に寄り添える体制づくりを行う。また、安心して教育を受ける環境を保障するとともに、必要に応じて市教育委員会を通じてスクールカウンセラー等の専門家の支援を得られるようにする。
 事実関係については、家庭訪問等により迅速に保護者に説明し理解を得るとともに、学校と家庭が連携し、今後の支援を適切に行っていけるよう協力を求める。
③ いじめを行った児童及び保護者への対応
 いじめを行った児童への指導に当たっては、いじめが絶対に許されない行為であることを理解させ責任を自覚させる。この際、当該児童が抱える問題等、行為の背景にも目を向け、当該児童の健全な人格の発達に主眼を置いた指導を行うようにする。また、必要に応じて、特別の指導計画による指導のほか、スクールカウンセラーや外部機関等の協力を得て、再発を防止する。
 事実関係については、迅速に保護者に連絡し、事実に対する保護者の理解を得た上で、いじめを受けた児童への謝罪を行う等の対応を促すとともに、学校と家庭が連携し、今後の指導を適切に行っていけるよう協力を求める。
 なお、教育上必要があると認めるときは、学校教育法第35条による出席停止について教育委員会との協議を行うが、運用にあたっては十分な配慮が必要である。 
④ 集団への指導
 いじめを認識していた児童に対しては、仮に止めさせることはできなくても、知らせる勇気が必要であることを指導する。また、周囲で囃すなど、同調していた児童に対しては、それらの行為は、いじめに加担する、いじめ同様に許されない行為であることを理解させる。この際、学級等の集団で話し合う機会を設けるなど、すべての児童自身がいじめを根絶しようという意識が持てるような取組を行う。 
⑤ 継続した指導体制の確立
 いじめの解決は、当事者をはじめとする児童の集団が、好ましい人間関係を取り戻すことである。従って、教育相談委員会において、いじめの解決に向けた指導方針や指導体制を確認し、全ての児童が互いを尊重し、認め合う人間関係を構築できるような集団づくりに努める。 
⑥ インターネット関連事案への対応
 インターネット上の不適切な書き込み等については、被害の拡大を避けるため、迅速かつ徹底的に削除する措置をとる。特に名誉毀損やプライバシー侵害等については、保護者や関係機関との連携をとりながら、管理者やプロバイダに対して速やかに削除を求めるなど必要な措置を講じる。 
⑦ いじめ解消の判断
 いじめは、単に謝罪をもって安易に解消とすることはできない。いじめが「解消している」状態とは、少なくとも次の2つの要件が満たされている必要がある。ただし、これらの要件が満たされている場合であっても、必要に応じ、他の事情も勘案して判断するものとする。
 ア いじめに係る行為の解消
 被害児童に対する心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)が止んでいる状態が相当の期間継続していること。この相当の期間とは、3か月を目安とする。ただし、いじめの被害の重大性からさらに長期の期間が必要であると判断される場合は、この目安にかかわらず、より長期の期間を設定する。
イ 被害児童が心身の苦痛を受けていないこと
 いじめが解消しているかどうかを判断する時点において、被害児童がいじめの行為により心身の苦痛を感じていないと認められること。被害児童本人及びその保護者に対し、心身の苦痛を感じていないかどうかを面談等により確認する。いじめが解消に至っていない段階では、被害児童を守り通し、その安全・安心を確保する。 

 

Ⅲ 重大事態への対応

1 重大事態の意味

(1) いじめにより、当該児童の「生命、心身又は財産に重大な被害」が生じた疑いがあると認めるとき。

(2) いじめにより、当該児童が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
 「相当の期間」については、年間30日を目安とする。ただし、児童が一定期間、連続して欠席しているような場合はこの限りでない。
<「生命、心身又は財産に重大な被害」に該当すると想定されるケース >
 ◯児童が自殺を図った場合
 ◯身体に重大な傷害を負った場合
 ◯精神性の疾患を発症した場合 等

(3) 児童や保護者からいじめられて重大事態に至ったという申し立てがあったときには、その時点で「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえない」と考えたとしても、重大事態が発生したものとして報告・調査に当たる。 

(4) 上記(1)~(3)以外の事案であっても、重大事態として対処する必要があると判断したもの。

2 重大事態発生時の基本的な流れ

(1) 重大大事態が発生した際は、校長は、直ちにその旨を市教育委員会に報告する。事案の対応にあたっては組織的に行うとともに、重大な被害が生じた疑いがあるときには、速やかに警察に通報する。

(2) 校長は、市教育委員会から調査を命じられた場合は、指示に応じて調査を実施する。また、市教育委員会が調査の主体となる場合や、市長が再調査を行う場合については、必要な協力を行う。

3 学校における調査の実施

(1) 重大事態に関する調査は、市教育委員会の責任において行うことから、組織のあり方や調査の方法等については、市教育委員会の十分な指導・助言を受けた上で実施する。 

(2) 調査の実施にあたっては、児童等のプライバシーに十分配慮するとともに、対象となる児童及び保護者にあらかじめ十分に説明し了解を得る。特に、質問紙調査の実施により得られた結果については、被害を受けた児童又はその保護者に提供する場合があることを念頭においた説明を行う。 

(3) 調査結果の報告及び提供については、市教育委員会の判断により行う。学校では、調査結果をもとに、今後の重大事態発生防止のために必要な対策を講じる。

(4) 万が一、児童の自殺という最悪の事態が発生した場合については、調査の中でその背景を明らかにする。この際、「児童の自殺が起きたときの調査の指針」(平成23年3月 児童の自殺予防に関する調査研究協力者会議)や「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(平成29年度3月 文部科学省により策定)を踏まえたものとする。

4 その他留意事項

 重大事態が発生した場合には、関係のあった児童が深く傷つくことはもちろん、当該学校の児童全体や保護者、地域にも不安や動揺が広がり、場合によっては事実に基づかない風評の流布等も考えられる。学校は、市や市教育委員会との連携のもとに、児童や保護者への心のケアと落ち着いた学校生活を取り戻すための支援に努め、予断のない一貫した情報発信、個人のプライバシーへの配慮に留意する。

 

Ⅳ 本校基本方針の見直し

1 基本方針の点検・評価

(1) 教育相談委員会は、いじめに関する事例についての分析や考察を行い、学校での諸活動に生かすなどの改善を図る。 

(2) 校長は、いじめに関する取組の内容を学校評価の項目に設定し、自己評価及び関係者評価等の方法によって達成状況を評価し、結果を踏まえた取組の改善を行う。

(3) 校長は、教職員が日常的に児童の理解やいじめの未然防止、早期発見に努めるとともに、いじめが発生した際にも問題を隠さず適切な対応を行っているかなどを評価し、指導する。